2010年12月20日月曜日

R.W.計画 その1

 ある3人の妙齢の日本人女性がいる。この3人は一緒に写真に写る機会が多く、それは大量に手に入る。これをもとに立体化することは可能か。まず等身の図面を起こすことにしよう。写真をトレースしてもだめなことは明白だ。(だいいち、写真家の著作権がありますから。)
 かりに、この3人をA、N、J,とする。分かっていることは身長だけだ。Aが164センチ、Nが160センチ、Jが161センチである。比較的長い焦点距離のレンズで撮ったと思われる写真で全身から顔の大きさを割り出そうとしたが失敗。顔の高さ、幅ともにとらえにくい。が、この数字は参考のためにとっておく。
 次に瞳孔間距離に注目。瞳孔は中心がはっきりしてるので計りやすい。デバイダーで写真を計りデータを集める。このとき3人が一緒に写っている写真を選ぶことは当然だが、レンズの焦点距離によって周辺にデフォルムがでることを考慮しなければならない3人並ぶと両端の2人の瞳孔間距離が伸びてしまう、よく、集合写真で端の人の顔がでかくなるアレである。
 下の表のようになった。
Nを1としてあるのだが、平均するとAとJが1,04以上となり差が大きすぎ、これは日本人女性の最大と最小に近い値になるので、とりあえずNを59ミリ、JとAを62ミリとしたいのだが、余裕をみてNを62ミリ、JとAを64ミリとして作業を進めていくことにする。こういった安全策はあとで仕事の遅滞をまねくが、カービングなるがゆえの配慮である。
 同様に各部をデバイダーで計り、瞳孔間距離の数字と比較していく。


 空欄は髪がかぶっていて計測不能の部分である。ところどころ矛盾した数字もあるようだが、これで作業を進めていく。正対した等寸の投影図を描く。写真をみながら福笑いの要領で描いていく。個体差はほんの1ミリか0,5ミリとなって現れるのがわかった。数字がおかしい場合は、感覚のほうを優先させる。
 正対した投影図をもとに側面図を描く。
 正対した投影図をもとに,体重移動したり、七三の向きにずらした図面を描いてみた。
 図面の用意ができたとこまで書きました。仕事は先に進んでますが、振り返って書いてます。顔の寸法の説明図にボッティチェリを参考にして描こうとしたのですが、正面の顔を描いたのがひとつも見つかりませんでした。
 一時、人物の正面像を描くことをしていたのですが、モデルを使うと不可能なことが分かりました。モデルは、必ずどちらかに顔をそむけます。プロのモデルでもです。真正面をこちらに向けてくださいと言っても、じょじょに顔をそむけていきます。それとも、わたしのせい?
 
 ✭・・と申し上げましたが、ホルバインを調べましたら視線がこちら向いてますね。あの人ぐらいの腕ならあとで視線だけこちら向けることは雑作ないことですが、正対してこっち見てるのもあるから、モデルが真正面向いてくれないのは私だけの問題であることが分かりました。
 彼氏目線みられたことないのですが、何か?
 
 ✭2・・実は、私が人像彫刻をはじめたとき念頭にあったのは、日本の生き人形ではなく、ホルバインなどが使ったというモデル人形でした。(デューラーの使ったヤツは残っています。)  当時、モデルは施主のVIPであり、モデルとして長時間拘束することはできず、体の部分は人形に服をきせて描いたと思われます。前に伸びる袖の部分だけ克明に描かれてるのでそれが分かります。ビロードは触った感触まで表現しています。
 さきほどホルバインの画集をふたたび出してきて、新たに下図の視線がこっちをむいてないものを発見しました(本画ではこっちをみてます。)衣服のシワも本画の油絵と違います。
 ホルバインの段取りを復元しますと、モデルのいる王宮などに出張し下図をかなりのスピードで描き、衣装を借りて帰る。アトリエでモデル人形に衣装を着せて本画にとりかかる。顔は下図であるデッサンをもとに多少ウケの良いように仕上げる。その際、視線はこっちに向ける。本画を見せに行き、OKをもらう、あるいは修正を要求され持って帰ってなおす。納品してお金をもらう。
 わたしも、紙や粘土が介在してはじめて、ヒトの顔と目をまともに見れます。ふつう、ヒトの目をまともに見られません。